女性の低音は?そして女性の音域は?
2016/01/04

ボーカリストとしては「いかに高音がきれいに出せるか?」を重要視されがちです。
・・・ですが、実は高音域よりも低音域を出す方が難しく、より意味があることをご存知でしょうか。
このコラムを書き始めた最初の頃に「低音域の出し方」を書きましたが、やはりこの低音域を完璧にマスターするのは難しいことなのです。
そこで今回は、「女性の低音域」について書いて行きたいと思います。
女性の低音域
女性は男性よりも高い声が出せます。もちろんですよね。
まず鍵盤を使って説明して行きましょう。
鍵盤の真ん中あたりにある「ド」の音を基本として捉えます。
そこから左に鍵盤の音を移動させて行きましょう。
白い鍵盤だけではなく、黒い鍵盤も使って、ひとつづつ階段を降りて行くようにします。
すると、音は半音ずつ低くなって行きますね。
あなたの低音域はどこまで出るでしょうか?
女性の音域
私の教えて来た経験上、たいていの女性は「ド」から左に数えて「ファ」「ミ」あたりまでは出せます。
『低音域の声の出し方』で書いたように、きちんとした声の出し方をすることができれば、低音域は間違いなくのびます。
レッスンや練習を積み重ねていくと、1オクターブ下の「ド」までは出せるようになります。
ですが、まだあなたが未成年者さんの場合、どうしても低音域がのびないこともあります。
それはまだ声が「大人声」になっていないということです。
年を重ねるにつれて、声というのは低音域が出やすくなって行きます。
なので、低音域がのびない間に、高音域をきちんと出せるようにしておきましょう。
また、あなたがとっても小柄な女性だった場合。
身長が低いと、低音が出しにくいという人が多いのも事実です。
でも、低音域があまり出せなければ、きっと高音域は出しやすいはず。
自分の個性だと思って、取り組んでくださいね。
ですが、中にはこんなすごい人も・・・。
女性で身長が低く、とっても小柄なのに、低音域の出し方をマスターしてから、1オクターブ以上も低音がのびた生徒さんがいます。
彼女は「ド」から左に数えて「ファ」までしか出せませんでした。
先ほど書いた、一般的な低音の位置ですね。
彼女の場合は、口を縦に開けられないという癖を持っていました。
そこで、《口を縦に開くこと、力を抜かせること、空気を吐くこと》を重点的に取り組んだ結果、なんと今では「ド」から左に1オクターブ降りた「ド」、そしてさらに左に降りた「ソ」まで出せるようになったんです。
これは、私の女性生徒の中でもダントツの低音域、第一位です!
そして彼女は、低音域が伸びたと同時に、フルボイスもファルセットもしっかりのびるようになりました。
現在、彼女の音域は「3オクターブ半」です。
さて、ここで「女性の音域」について書いてみましょう。
先ほどの彼女の「3オクターブ半」というのはこんな感じ。
●で示した所がスタート地点、基本の「ド」になります。
左に降りて○まで出せれば1オクターブ。
そこからソまであるので、この時点で1オクターブ半、と考えます。
もう一度●のスタート地点、基本の「ド」に戻って、今度は右に移動します。
◉のドで1オクターブ、そして◎のドで1オクターブ、合わせて高音は2オクターブになりますね。
なので、先ほどの1オクターブ半と、2オクターブを合わせて、彼女の音域は「3オクターブ半」というわけです。
ここで、みなさんが気にされるであろう「音域」ですが、はっきり言います。
女性の音域は、ほぼ3オクターブです。
ここまで出せれば十分です。
しかし、ただ音が出せればいいというものではありません。
正しい出し方が出来てこそ、歌う時に使えるわけですから。
この中でも、声の出し方を明確に分けて説明すると、スタート地点である●「ド」から右に移動して◉ド、ここまでは完全にフルボイスを出して欲しい所です。
私は、過去に何百人もの生徒を教えて来ておりますが、女性の生徒さん全員に、ここの1オクターブはフルボイスで出せるようにして来ています。ここは絶対に出せる所ですよ、みなさん。
そして、そこからまた右に移動した◎ド、ここまではファルセットで出せるところです。
ですので、上の図の3オクターブは、女性であれば絶対出せる所の図であると考えて頂いてもいいと思います。
もちろん、◎ドからまだ右に移動して、もっと高音が出せる人はいます。出せるのであれば、出して頂いて結構です。
ですが、ただがむしゃらに出すのではなく『音をきちんとつかめるかどうか』というのが大きなポイントとなります。
例えば●「ド」からいきなり◎ファの音を当てられるかどうか、ということ。
1オクターブ以上飛び越えて音をつかむのは簡単な事ではありません。
どうしても頭では音を重視しようとするために、高さの部分が曖昧になってしまうのです。
高音が高く出せる人は、個性としてすばらしいこと。
それを、活かすも無駄にするのも、まずは練習次第。というわけですね。