腹式呼吸を身体で理解する3つの方法!
2015/12/23

歌が上達するためには必要不可欠な「腹式呼吸」
前回の記事で、胸式呼吸について書いてみましたが、身体の動きはわかりましたか?
簡単に言うと、胸式呼吸は上半身を使った呼吸の仕方。
歌を歌う時には重いものをしっかりと持ち上げることが出来るように、重心は前に来るようにしなければなりません。
さあ、今度は、その歌う時に必要な「腹式呼吸」を身体を使って見つけてみましょう。
目次
腹式呼吸を見つけよう-その1
身体を十分横たわらせる事が出来るスペースに、仰向けに寝てみてください。
足をしっかり伸ばして、両手はおへそのすぐ下あたりに軽く添えるようにして、まずはリラックスしましょう。
そして大きく深呼吸してみてください。
身体のどの部分が大きく動きましたか?
この時、お腹が大きく広がる、ふくらむ感じがすれば、それが腹式呼吸です。
分かりやすく言えば、お腹に空気が入る感じです。
添えられている手が、盛り上がるように感じられるはずです。
この時、空気自体はもちろん肺に入っているので、胸も多少は膨らみます。
ですが、お腹が膨らむ時に肩が上下しない、首元に力が入らない、これが腹式呼吸です。
次はもっとわかりやすく噛み砕いて説明してみたいと思います。
砂時計をイメージして腹式呼吸を身体で感じる
砂時計は二つの空洞が縦になっていますが、これを仰向けになっている身体に例える為に横にしてみましょう。
このそれぞれの空洞を、「胸のタンク」と「お腹のタンク」として表してみます。
口または鼻から入って来た空気は、まずひとつめの胸のタンクを通過してお腹のタンクへと入って行きます。お腹のタンクが満タンになってくると、今度は胸のタンクへ移動します。
これをイメージして、仰向けのまま大きく深呼吸してみましょう。
お腹のタンクから先に空気が入って来てお腹が膨らみ、お腹のタンクがいっぱいになったら胸のタンクに空気が入って胸が膨らんでいきます。
そして、いっぱいになったお腹と胸のタンクから空気を吐き出すと、お腹も胸も同時に、力む事なくきれいに凹んで行くはずです。
この時、胸式呼吸の時と全く違うのは《肩や首元に余計な力がかかることは感じられない》という事。
こうイメージしながら腹式呼吸を理解することで、考えられないほどの空気を体内に取り込む事が出来るようになります。
そして、しっかり取り込む事が出来たものは、しっかり吐き出す事が出来るので、そこにかかる腹筋の力を十分に使いこなすことも出来るようになります。
特別に意識をしなくても、腹式呼吸がよく分かるのがこの「仰向けに寝てみる」という方法。
ただ寝転がって深呼吸をするだけですが、実際呼吸だけに集中するとじんわり汗をかくほど、身体が温まってくるので、ひとつの健康法とも言われます。
腹式呼吸を見つけよう-その2
腹式呼吸というのは、実はただの空気の動きや腹筋の動きだけではありません。
空気を取り込んだり、吐き出したりするのに腹筋の力が必要な訳ですが、その肺と腹筋との間で頑張ってくれているのが「横隔膜」という強力な存在なのです。
「横隔膜とは何だろう?」
横隔膜の存在というのは目に見えるものではありません。
肺という大きなエアーバッグを身体の中から支えてくれている、いわば影武者的な存在。
この横隔膜が、肺と腹筋との間にある事でスムーズな腹式呼吸を作り出す事が出来、しっかり安定した呼吸を生み出してくれるのです。
その上、大きなおもりである「声」を押し出してくれることになるのです。
さあ、今度は、「横隔膜」を身体を使って見つけてみましょう。
椅子に座って「横隔膜」を見つけよう
まずは椅子に浅く座ってみてください。
この状態だとまだ重心はお尻から後ろにかかっていると思うので、身体を少し前に倒して、重心を前にかけるようにします。
そして、片手をお腹のおへそ部分に、そして片手を脇腹に当てて大きく深呼吸してみましょう。
このときの呼吸は、「砂時計を横にする感じ」でやった時と同じように、お腹のタンクに空気を入れる、という感じをイメージして行います。
お腹に空気が入る感じがわかりますか?
そしてその時、脇腹も広がる感じが伝わるでしょうか?
うまく腹式呼吸が出来ていると、空気を吸い込むと同時にお腹と脇腹がグッと広がる感じがします。
浮き輪をつけているとしたら、一気に浮き輪に空気が入る、そんな感じです。
そして息を吐き出すと、お腹は凹み、脇腹のふくらみが中に入り込んで行くような感じがするはずです。
お腹のタンクに空気が入る、というような表現をしていますが、これはあくまでもイメージですよ。
何度も言うように実際はお腹に空気は入りません。
ですが、お腹だけではなく、お腹の周り・背中にも、空気が入るという感覚を持ってください。
脇腹の動きがつかめない人は、手を置いている位置が悪いのかもしれません。
横隔膜の位置も人それぞれなので、お腹側や、背中側、少し高い位置など、いろいろ手を動かしてみてください。
息を吸った時に、添えている手に何となく広がりのようなものを感じたら、それが横隔膜と腹筋が手を結んだという証拠。
「腹筋と横隔膜の連結プレー」
そして息を吐き出す時に、その手を組んだ腹筋と横隔膜が見事な連結プレーで、肺を押し上げて口から見事に空気を吐き出してくれている。
「歌」を歌うのは、その吐き出す空気に「音」「声」という「おもり」が乗せられる事。
その「おもり」を力強く吐き出すために、腹筋と横隔膜の連結がもっと強くなる必要がある。ということなのです。
腹式呼吸をみつけよう-その3
ここから少し応用編として、立った状態でその腹式呼吸をきちんと出来るかどうか、横隔膜を意識出来るかどうか、重心がきちんとした位置で保てるかどうか、をやってみたいと思います。
「基本の立ち方」
簡単なようで、実はとても難しい「立つ」ということ。
力を入れすぎてしまうと、身体を反らしすぎてしまうし、猫背の人は前屈みになってしまいます。
身体のゆがみなどがあれば、左右に身体が傾く人もいます。
歌を歌うのに最適な立ち方は
・肩幅くらい足を開く
・少しつま先を開く
・両足の親指、人差し指に重心を置いて立つ
これが難しい人は、まずつま先立ちをしてみるといいですね。
女性であれば、ハイヒールを履いた時の、重心を前に持って行く感じをイメージすればいいかと思います。
この3つを意識したら、次は下記の3つを意識して立ちます。
・あごを引く
・お腹を引く
・お尻(下半身)を引き締める感じ
すると、まっすぐ立っているけれど、微妙に少しだけ前に重心がある感じに立つ事が出来ます。
重いものを持ち上げる時に、重心を前に持って行って持ち上げるのと同じ、少しだけ身体が前にある、そんな感じですね。
基本のブレストレーニング①
この状態で、腹式呼吸の①と②を合わせた呼吸方法を行ってみましょう。
空気を吸い込むと、お腹周りのタンクに一気に空気が入る感じ。
吐き出すときはお腹周りから押し出されるような感じ。
それを意識しながら、
①鼻から息を吸って鼻から吐く
②鼻から息を吸って口から吐く
③口から息を吸って鼻から吐く
④口から息を吸って口から吐く
の4パターンのブレストレーニングを、ゆっくりやってみてください。
身体がどんどん温かくなってくるのを実感出来るはずです。
呼吸に集中することは、普段の日常生活の中ではほとんどありません。
空気がどれだけ重くて大きいものかが実感出来るかと思います。
これに慣れたら、少し圧力をかけてみます。
基本のブレストレーニング②
①鼻から大きく息を吸って、5秒止めて、鼻から吐く
②鼻から大きく息を吸って、5秒止めて、口から吐く
③口から大きく息を吸って、5秒止めて、鼻から吐く
④口から大きく息を吸って、5秒止めて、口から吐く
息を止める作業が入るだけで、腹筋に大きな力が加わります。
この息を止める作業が、音をつかんで口から吐き出す時の「音」や「声」の重さに耐えられるイメージトレーニングとなります。
次回は、腹式呼吸をマスターするためのロングブレストレーニングをご紹介します。