音痴とは?~音痴克服までの道のり~
2015/12/14

「音痴なんですけれど、治りますか?」
「音痴だから恥ずかしくて歌えないんです。」
というようなご相談を良く受けます。
ですが、私ははっきり言います。
「音痴だと分かっている人は音痴じゃない!」
そうなんです。
本当の「音痴さん」というのは、自分が音を外してしまっていることに気がつきません。
つまり、音は外れているが「自分はきちんと歌えている」と思い込んでいる人。
という訳です。
目次
タイプ別、音痴克服方法
「この音を出そう」と思ってから出し終えるまでには、まず脳で指令を出してから、
①自分の体内から響かせて、耳の内側で聞く
②口から出た音を外側の耳から聞き入れる
③頭で指示した音と、聞き入れた音を一致出来ているか確認する
・・・という3行程を踏んで行きます。
この時に、①②③の行程を全て一致させることが出来る人は「音を外さずに歌えている」ということなんです。
これをふまえて「音痴」にもいろんな種類があると私は考えています。
A、 全く音が聞き分けられない人。
B、 音は聞き分けられるけれど、自分の音をそこに合わせる事が出来ない人。
C、 音を聞き分け、自分の音をそこに合わす事は出来ても、口から出る音に責任が持てない人。
D、 A・B・Cのすべての作業が理解出来ない人。
E、 音、声、そのものに対して、意味が分からない人。
このA~Eに関しては、私が過去に関わって来た生徒さんへのレッスン経験を経て出した見解であります。
それをひとつひとつ分解して説明をして行きたいと思います。
A、全く音が聞き分けられない人
音楽を聞いている時に「音」の高さの違いで作られているメロディそのものを「音」として受け入れる事が出来ない。
または音の「高」「低」が理解出来ない人のことを言います。
目に見える物は「高い位置に置く」「低い位置に置く」ということがどういうことかわかります。
それは実際ターゲットになるものが目に見えているからですね。
ですが「音」というものは目には見えません。
例えば鍵盤で弾く場合、左の方に行けば音は低くなり、右の方に行けば音が高くなるのは理解が出来ると思います。
それはその鍵盤が目に見えているからですね。
ですが、それを耳に吸収して体内に受け入れた時に「音とはなんだろうか?」となってしまう訳なんです。
この手のタイプの方には
「音」というものが何であるのか?
聞き取った音は一体どの音であるのか?
また、口から出した音はどの位置にあるどんな高さの音であるのか?
を時間をかけてゆっくりと説明し、向き合う必要があります。
B、音は聞き分けられるけれど、自分の音を合わせる事が出来ない人
聞いている音楽の「高低」は聞き分ける事が出来ますが、その明確な高低に合わせて自分の声を出す事が出来ない人のことを言います。
高い音を聞いたときに、なんとなくその位置に合わせるつもりで高い音を出してみますが、そこには当たらず。
低い音を聞いたときに、なんとなくその低さに合わせたつもりが、やはり正しい位置に音が当たりません。
それを繰り返しているうちに頭が混乱して、音の高低の聞き分けさえも出来なくなってしまいます。
この手のタイプの人は、まず「音」の流れを知ることが大切です。
私が行っているレッスンでは、いろんなパターンからその人に必要な行程を探し出し、音の高低を伝える「流れ」をつかませる為にいろんな方向でトライさせます。
ここでの「流れ」というのは、
①鍵盤の音をまずよく聞く。
②その音を真似てみる。
③その音がきちんと当たっているかどうかを聞く。
④もしも音が当たっていないのであれば、その人の出している音に合わせて鍵盤を弾く。
⑤そこで鍵盤の音から外れて違う音を出してしまうのであれば、また鍵盤でその人の出している音に合わせる。
または、一番その人が出しやすい心地よい音を探し出し、鍵盤でその音を合わせる。
⑥鍵盤の音と出している声が一致したら、その声を「ハミング」で出す。
⑦耳から入ってくる鍵盤の音と、ハミングをしている自分の音(つまり口の中で響いている音)を一致させる。
しっかり聞き入れて頭の中と耳の中でそれらの音を一致させる。
・・・ということを繰り返して行きます。
C、音を聞き分け、自分の音をそこに合わす事は出来ても、口から出る音に責任が持てない人。
音が合わせられるのに『口から言葉としての音が出た瞬間に音が微妙にずれてしまう人』のことを言います。
つまり、頭で音の高低の指令が出て、音を口の中で作り上げる時には音が合っているのに、実際口を開いて「音」を言葉にしてしまうと音が変わってしまう、ということなのですね。
みんな誰でも「歌をうまく歌いたい」と思っていると思います。
ですが口を開いた瞬間、つまり音が「言葉」を乗せたときに音がずれてしまっては全く意味がありません。
この手のタイプの人は、まず「言葉」の重みを知るべきだと思います。
「音」だけの時には、重みはあまり感じないかもしれませんが「言葉」が音に乗っかった時には、その言葉の重みを受けてその音は少し重くなります。
そこを意識する事が大切ですね。
D、【A・B・C】のすべての作業が理解出来ない人
つまりは
A・全く音が聞き分けられない
B・音は聞き分けられるけれど、自分の音をそこに合わせる事が出来ない
C・音を聞き分け、自分の音をそこに合わす事は出来ても、口から出る音に責任が持てない
が総合された人のことをいいます。
とにかく「音」の位置感覚が全く取れず「声」の位置感覚も全くわからない。
だからこそ、口から出る「音」「声」そのものの位置感覚さえも全くわからない、ということですね。
このタイプの人は、音が全く聞ける状態ではなかったり、音の高さのイメージが全く出来ない人が多いです。
「音が聞けない」というのは、耳または鼻の病気などがある方、または何らかのトラブルがある方にも当てはまります。
音が聞き分けられないという事は何らかの「原因」があるはずなので、時間をかけた鍵盤を使って対面でのレッスンが必要かと思います。
E、「音」「声」そのものに対して、意味が分からない人
このタイプの人は、「音」と「声」の関連性を一致させる事が非常に難しいです。
そして、何らかの問題を抱えていることがあるので、そこを探しだすところに時間をかけていきます。
音楽が好きであれば、その人の好きな音楽を使って『イメージトレーニング』をさせる所から入ります。
過去にこのタイプの生徒さんをレッスンしていた事があります。
正直、レッスンはとても大変なものでした。
というのは、その生徒さん自身は音楽がとても大好きで、歌うのも楽器を演奏するのも大好きなのだけれども、実際に歌を歌うと「音」も「リズム」も「タイミング」もそして「言葉」さえも、何もかもが一致しない。
という結果であったからです。
まず時間をかけて向き合って話をし、過去のことなどを聞き出して行くことからはじめました。少し聞きにくい質問もしました。
もしも身体に何らかの不調や欠陥があるとしたら、それが原因になるかもしれないと思ったからです。
そして、全てのことを同じ目線で行いました。
一緒に同じ声を出したり音を聞いたりしました。すると、ある時に気付いた事がありました。
それはその生徒さんの独特な「身体のゆがみ」でした。
まっすぐ立っても右肩と左肩の高さが違います。
右手と左手を交互に、前、後ろ、上、に伸ばしてもらっても、それぞれに高さが違いました。
おまけに、顔のゆがみも歯の噛み合わせのゆがみもとても差があるものでした。
レッスン最初には必ずストレッチをしますが、この生徒さんのレッスン時にはストレッチに加えて、等身大に映る鏡を見ながら身体のバランスを揃えて行くことからはじめました。
右肩、左肩の高さを揃えて立つこと。
そして立った時の重心の位置を確認すること。
腹筋で立つということ。
右手、左手を上げたときに伸ばしたときの高さを揃えること。
顔を必ず正面で見据えること。
両あごの高さ、噛み合わせを意識すること。
座った時の姿勢、両肩の高さ確認・・・などなど。
毎回これらに多くの時間を費やして、少しずつ音を聞く以前の体制を整えました。
私はお医者さんではないので、身体のゆがみが一体何に影響しているのか明確なことはわかりませんが、それでも多くの時間を費やし、ようやく鍵盤の音が少し分かるまでになりました。
まとめ
音楽というのは楽しいもの。
ですが、実際は楽しいだけではないこともあります。
特に「音痴」と言われる方にとっては、楽しさを知る為に乗り越えなければならない、ガマンしなければならない事もたくさんあると思います。
音の高さが分からない人に、鍵盤で音を弾いて確認させても無意味です。
それであれば、まずは原因を探してくれて、そしてその原因を追及してくれる信頼出来るトレーナーに出会う。
トレーナーが一緒に頑張ってくれなければ分からない部分もたくさんあるはずです。
大丈夫「音痴」は必ず乗り越えられるものですよ。
一緒に頑張って、楽しく歌えるようにしていきましょう。